"一緒にマップを作るということは、共同で行った体験をみんなで細分化し、パターンを発見し、そこで共有した体験の根源的な理由について共同で理解にたどりつく、ということです。"
Social Cartography: The Art of Using Maps to Build Community Power,
in Weaving the Threads Vol. 17, No. 2, 2010
初期のマップの例には良い猟場を共有するための小道や、きれいな水源といったものが含まれ、どちらも高度な文明化を構築するための生存と繁栄に必要不可欠 なものです。近代社会では、空間情報は位置を特定することで他の目標の達成に役立ち、我々の生活の質を高めることに似た重要性を帯びています。
マップは我々に"どうやったら学校まで安全に自転車で行けますか?"とか"靴はどこで修理できますか?"、さらにはより切迫した"緊急時のいちばん近い病院への行き方は?"といった問いへの回答を与えてくれます。 地域や商用の施設がどこにあるか定義できるということや、他の人に位置情報間の関係やそこへの行き方を示したりすることはいつの時代でも世界中の人間にとって有益で、本質的ですらあります。
こういった理由から、マップ作りのために人々が一緒に作業するのは自然なことに思えます。 にも関わらず、全てのマップがオープンに編集できたり、自由に使える訳ではありません。 この、情報を提供し共有するという不可欠なニーズが、コラボレーションの中核です。 協働的なマッピングはこの情報を集めて他の人と共有する方法であり、OpenStreetMapはこのより大きな動きに強く貢献しています。 この章ではOpenStreetMap以外のことも含め、協働的なマッピングについてのより広い話題を紹介します。
あなたの友達が靴を修理したいとしましょう。 あなたは彼女にその場所を教えられるかもしれませんが、いちばん良い場所ではないかもしれません。 あなたは全ての靴の修理屋のマップを作ることができるかもしれませんが、 それは大変な作業になりそうではありませんか? あなたの友達がマップ作りを手伝えるとしたらどうでしょう? あるいはさらに世界中の誰でも手伝えるとしたら? これが協働的なマッピングの基本です。
協働的なマッピングはクラウドソースによるマッピング及びボランティアによる地理情報 と呼ばれています。 マップ作成の新しい技術として、これはネオジオグラフィ(新しい地理学)の一部です。 そのアイディアは人々のグループは情報を集めるために一緒に作業できる、というものです。 この情報はとても詳細にすることができます。例えば、ある地域の全ての靴修理店のマップとか もっと汎用的には、"全世界のフリーなマップ"のように。 協働的なマップを作るには、多くの異なるツールや動機があります。
みんなで作るマップに参加する理由は様々です。 あなたにはとても深刻な理由があり、コミュニティが全ての地域の病院と緊急時用の リソースの位置を表わした安全マップを作る手助けを したいのかもしれません。 あなたはおそらく誰でも利用できる水飲み場の場所を記録したり表示したいでしょう。 もしあなたがハイキング愛好家なら、あなたのお気に入りの場所を共有したり 他の人が書いたマップを読んで新しい場所を発見したいでしょう。 あるいは、学校の先生なら、学生に空間認識について教える新しいやり方を 欲しがっているかもしれません。 あなたにとってこういったアイディアは興味深いですか? もしかしたらあなたは既に自分のアイディアをお持ちかもしれませんね、 協働的なマッピングは自分のアイディアで自分を助けることができます。
協働的なマッピングには様々なやり方があります。 いちばん簡単な方法はみんなと一緒に座って紙とペンを使うことです。 作成の過程こそ協働的ですが、 紙とペンのテクニックは紙きれの周りに集まることのできる小さなグループ以上に 共同作業を広げることは容易ではありません。 たとえ1枚の紙が大きなものであっても、 1枚の紙を元に同時に共同作業できる人数には物理的な制限があります。 OpenStreetMapではグループが電子的に同時に多くの人々が作業でき、 参加人数を飛躍的に拡張します。 しかし、これらは唯一の選択肢ではありません。 紙とペン及びOpenStreetMapを取り囲むツールに加えて、 共同で、共有できるマップを作る多くの異なる手法があります。
Wikimapia (http://wikimapia.org)自身によれば、 "WkiMapiaはオンラインで編集できるマップです - あなたは地球上のどんな場所についても 書くことができます。あるいはマップを見て回るだけでも膨大な量のマーク済みの場所を発見できます。" WikiMapiaで、あなたはオフィスビル、レストラン、公園、そして村を追加して数項目の 名前を付けることができます。 WikiMapiaのアイディアは誰でも一緒に作業できる、ひとつの協働的なマップがある、というものです。 WikiMapiaに情報を追加したり、他の人が追加した情報を見るにはアカウントは不要です。 他の人が追加した場所の変更を始めるにはアカウント(そしてコミュニティへのある程度の貢献)が必要です。
Ushahidi (http://ushahidi.com) はオープンソースのソフトウェアアプリケーションで あなた自身による情報のクラウドソースによるレポートや マップとタイムラインによりその情報の可視化を可能にします。 元々はケニヤでの2007年から2008年にかけての選挙後の暴力の間 暴力事件をレポートするマップを作成するのに使われました。 今日では多くの異なるみんなで作るマップのプロジェクトに使われています。 UshahidiのアイディアとはUshahidiアプリケーションを通じて、あるいは ソーシャルネットワークやSMSを通じて、ユーザが"レポート"を直接登録できる、というものです。CrowdMap (http://crowdmap.com) を使ってUshahidiを素早く立ち上げたり、あるいはソースコードをダウンロードして自分のサーバで動かすことができます。
Google Map Maker (http://www.google.com/mapmaker) は Google Maps と Google Earthで情報を修正したり追加する方法です。 あなたが追加できる情報の例は不明あるいは誤った道路や興味のあるポイント(POI)を含みます。 新しいユーザによる編集は公開前にレビュープロセスを受けます。 世界のある部分では、新しいマップ情報は公表前に必ずレビューされます。
Google MyMaps (http://maps.google.com/maps/mm) はGoogle Mapsに関連するタブで あなたは自分のマップに情報を保存することができます。 あなたは自分のマップを公開するか、非公開つまり リンクを知っている人たちとだけ共有するか 自分で決めることができます。 特定の人だけを招待してあなたのマップに協力してもらったり あなたのマップを世界中で利用できるようにして貢献することができます。
ご覧頂いたようにみんなで作るマップには多くの選択肢があります。 なかにはOpenStreetMapによく似たものや違ったものがあります。 しばしば、これらのツールはOpenStreetMapの補完的な位置にあります。 例えば、多くのUshahidiインスタンスはOpenStreetMapをベースマップとして利用し、 新しいレポートが投稿される文脈を与えるために既に存在する情報を含んでいます。 Ushahidiを使う人々は自分たちが収集している情報を参照するためにOpenStreetMap を使うことができます。
OpenStreetMap ロゴ
OpenStreetMapの強みのひとつはオープンなライセンスです。 だれでもOpenStreetMapのデータを自分の目的に、商用目的であっても 使うことができます。 唯一の条件は、あなたがデータを利用する際にはOpenStreetMapと その投稿者のクレジットを表示し、データに対して行った改善は何であれ 同じライセンスの下でリリースしなければならない、というものです。
OpenStreetMapと上で述べた他のいくつかのみんなで作るマップツールとのもうひとつの違いは OpenStreetMapでは誰もが同じひとつのマップに投稿しているということです。 この種の収集方法論では多くの知識ソースから非常に細部にわたり追加できるようになり、 情報が個々のプロジェクトに分断されて蓄えられることを防ぎます。
OpenStreetMapとGoogle MapsやMapQuestやBingのような他のオンラインマップとを 区別することは重要です。 後者の第一の目的は検索結果を表示してそれぞれのビジネス用にお金を得ることです。 これらのマップは、ユーザがマップ上に自分のデータをオーバーレイして 特別なファッションで表示できるツールを持っている場合があります--しかしこれ以上何をしたいでしょうか? これらの他のシステムとは異なり、OpenStreetMapの第一の目的はユーザに そのデータを提供することにあります。 これにより誰でも自分のやりたいようにデータを使うことができます。 あなたは想像力の及ぶ限り、完全に新しくエキサイティングなマップによる プロダクトを作成することができます。
これらに加えてOpenStreetMapには大きなコミュニティがあります。 アカウントを登録している人が50万人以上もいます。 この活気あるコミュニティはマップに情報を追加する個人、 編集を有効にするためのソフトウェアを書く人、 その他OpenStreetMapデータから専門化したマップを作成する人 などを含みます。 OpenStreetMapの人々は世界中から集まって技術を共有し、地域をマップし、 お互いに学んだり単に社交パーティで会ったりします。
この本の残りの部分を通して、OpenStreetMapを使って 上にリストしたプラットフォームに対して類似の種別のデータを収集する 方法をお見せします。 また、結果としてのデータを異なる方法で利用するやり方をお見せします。 あなたが街中の靴修理店全てについての情報を集めたい場合でも、 興味のあるハイキングルートをマッピングしたい場合でも OpenStreetMapは役に立ちます。 そして、いったん作り上げたら、あなたが集めたものを使うツールを 提供し、様々なやり方で他の人と共有できます。
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